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 この製品はカーステレオだが、こうしたものを当時はコンポーネントなどと言った。

 それはスピーカーを組み合わせたりするという意味でもあったが、この製品はひとつで多機能を実現したということでそう称したようだ。


 そのことを除いても、カーステレオ・コンポーネントとは、要はクルマの標準装備のラジオを交換してグレードを上げる商品だ。

 通常装備ではカセットはついていなかったから、この頃はCDはまだない。

 多連装のCDで自動で長々とアルバムを流してくれるようなことはまだ少し先の話だ。


 確かに標準のラジオでは機能が物足りないような気はしただろう。

 中にはクルマには何もついていず、ラジオが選べる「オプション」となっている自動車もあった。


 もちろん、カーラジオは本来、緊急時のクルマの情報源として必須とされていたから、これは例外中の例外で、ラジオを装備しないという選択肢はなかった。




 
 自動車には必ずラジオが装備されている。

 昔の時代は自動車というのは孤立したものだった。

 外部の様子は肉眼でしか知ることが出来ず、外部の情報が途絶した存在だった。


 そのためラジオだけでなく、CB無線、合法のパーソナル無線も利用された。

 そのうち、テレビ、カーナビも登場し、自動車が情報から孤立しているというのは今ではあまり意識されない。

 特に携帯電話が普及した今ではラジオの必要すらないのかも知れない。



 この当時、高速の渋滞情報、事故情報はラジオでなければ分からなかった。

 当時のドライバーには携帯などなかったし、いちいちクルマを停止させて電話ボックスに駆け込むわけにもゆかない。

 ラジオは自動車に必須のものだった。

 このため、日中のラジオ番組は自動車の情報源となることが使命となっていた。


 だから深夜の時間帯、深夜放送がエンターテイメントとして流行した。

 深夜のドライバーは例外的なものとできたからだ。





 この製品の取り付けは、日本では自動車パーツ店に頼んだりディーラーに頼んだものだ。

 標準装備では満足できないドライバーが増えてゆき、こんな製品も当たり前のなってゆく。

 この頃、自動車ディーラーや整備工場以外にパーツ屋が登場して市場を開拓したのも、こんなオプション製品の市場が広がっていたことを反映している。



 自動車のオプションの扱われ方は地域によって様々だ。

 海外、とりわけ欧州ではこの種のカーコンポはスロット式になっていて、するりと着脱できるものが主流だった。


 不用意にクルマを停めておくと、とたんに盗まれてしまうものだから、若い連中は自動車を停止させるとこういう製品は取り外して手にぶら提げてBarなどに出かけた。


 だから、製品には取り外しやすいようにハンドルがついてたりした。


 この製品にはそのハンドルは見当らないから、やはり国内向けの製品なのだろう。

 車上狙いがあまりいない、日本の昔の治安のよさが伺えるところだ。





 この製品はコンパクトに多様な機能を詰め込んだ我が国のお家芸のような製品だ。


 ラジオ、イコライザ、シンセサイザ、メタル対応カセットテープと贅沢だ。


 不思議なことだが、カーコンポでこれだけ小さく作れる技術があったのに、部屋のラジカセにはこれほど小さな製品はなかった。

 カセットにしても、カーコンポはみなこうしたスロット式のカセット機構で、これほどの高級機でなくとも差し込むだけでよいものがほとんどだった。

 ボタンを押せばカセットテープが飛び出す便利なものだった。


 普通のラジカセではこの機構を備えたものはほとんどなかった。



 カー・オプションはなぜか家庭・個人用よりも進んだもの点が多かったが、あくまでカー・オプションの世界に限られた。

 この説明としては、自動車の特性ということがよく言われた。


 自動車の車内は密閉された空間で高い音質を容易に実現できるが、個人の部屋はそうはゆかず、製品には反響のための空間や工夫が必要なのだとされた。

 それは本当だったろうか。 あまり説として説得力はないように思える。


 要は、カー・オプションは高くても売れるが個人用はそうはゆかないという、各メーカーに一致した考え方があったように思う。

 そして要求される製品の寿命もカー・オプションはそれほど長くはない、何十年も同じ車に乗り続ける人はあまりいない。

 だから複雑でぎっしり回路の詰まった壊れやすいものでも製品として作れた。

 そんな理由もあったかも知れない。