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 パイオニアという会社はこの頃、よく雑誌広告を出している。


 並み居るオーディオ専門企業に割って入っただけのことはあった。

 それだけの苦労はあったのだろう。


 これまで、オーディオというのは「ファッション」ではなかった。

 オタク系のこだわり、精密機器としての技術競争が主だった。


 そこにイメージ戦略を掲げて割って入ったパイオニアの当時の広告戦略は、まさに図に乗ったものだったと思う。


 パイオニアはこの広告戦略によって、一気にオーディオの世界でトップクラスに昇り詰めたと思う。





 パイオニアがこのことで果たしたことは大きかった。

 音へのこだわりや音源の追求よりも、ファッションというものはずっとマーケットが大きかったからだ。

 オーディオ製品の市場を開拓した功労者と言ってもよかった。


 パイオニアが、オーディオとライフスタイルやファションを結びつけたのだった。

 こんな広告のように、スポットライト式の証明、黒いフレームの棚、シンプルで男らしいダンディズムを打ち出したのは成功だった。


 この頃、実はアメリカでは「ハイテック・デザイン」なるコンセプトが登場していた。

 それはフランスの建築の分野に喩えればアール・ヌーボーのようなムーブメントだった。


 今でも、それは例えば打ちっぱなしコンクリートの住宅デザインなど、名残りがある。


 パイオニアが、広告のモチーフとしてこんなシックだとか、今で言えば「渋い」ファッションを取り入れたことで、オーディオの分野から男らしさが追求される時代へと認識が広がっていった。


 それは例えポーズに過ぎなかったとしても男たちはみな男らしくあれと夢想し、シンプルで潔のよい生活を指向したのだった。


 当時の文化にパイオニアが与えた影響は大きかったと思う。


 それだけの成功体験があったために後年になって間違ってしまったのかも知れない。

 
 カーオーディオでパイオニアはまた成功を収め、やがてコマーシャリズムにどっぷり漬かるようになってゆく。

 そうしてカーナビの失敗。

 抱え込もうとして全てを失った。

 栄枯盛衰というのはあるものだが、あまりにももったいない、そう思う。