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  昭和という時代を知る人なら、このブルドックのイラストを見てピンと来る人は多いと思う。

 このイラストレーターの名前は知らないが、なぜかこのブルドックのイラストには覚えがある。

 これと似たようなものがやたらと氾濫した記憶がある。

 「テクニクス」だけのものではなかったように思う。



 これとは別のものだが、アメリカから版権が輸入されたようなイラストがあって、同じタッチで擬人化されたブルドックが描かれ、ビリヤードをやっているというのがあった。

 あちらはつとに有名だ。

 昭和の時代には、あちこちの街角や駅の横などで露天商がポスターを売っていたものだ。

 だが、このイラストはそれと似た雰囲気ではあるが違う。

 キャラクター的な描かれ方をしているように見えるから、コマーシャル系の作家なのだろう。


 ブルドックのかぶるコック帽に描かれている精緻なシワは、どこかリアルさを追求しているようだが、全体としてリアリズム調というのでもない。

 もちろんコミック的でもない。

 どこか日本の漫画とは違う、洋風なセンスがある。
 とてもアメリカンな感じがする。



 この昭和の頃、すでに日本は「漫画文化」というのもが隆盛を極めていた。

 「いい年をした大人が漫画など読んで」などと、世間で苦言されはじめた頃だ。

 「少年マンガ」といいながら、すでに漫画雑誌は大人のものになりつつあった。


 この当時の、漫画が溢れていた周囲で差別化をするとすれば、こんなアメリカン・イラストレーションが必要だったのかも知れない。


 漫画とイラストレーションはもちろん違う。

 片や漫画というのは読み捨てられ消費されるものであり、イラストレーションというのは保有され飾られ、眺められるものだ。

 ポスターというのは、いわば絵画をプリントで工業製品化したものだと定義していい。

 額入りのポスターすらあちこちで売られていた昔の思い出は、今から思えばとても懐かしい。




 この種の雑誌広告というのは、一種の雑誌の「オマケ品」のようなものだった。

 その真意が理解できる人は、きっと昭和の感覚がある人だろう。


 雑誌編集は、壁に飾っておきたくなるようなイラストや写真の広告を掲載し、人々はこれを切り抜いて壁に貼ったりした。

 雑誌を買えば上質のイラストレーションのポスターが無料で選んで貰える。 なかなかお得ではないか、というわけだ。


 掲載する編集の側もそれがわかっていて、あまり痛まないページにこうした広告を載せた。

 ビスケットの缶が値打ちがありそうなものにしていたり、ジャムの瓶がデザインされていたり、包装紙が思わずとっておきたくなるようなものだったりする。

 それと同様に、広告自体が雑誌の付加価値になった。


 だから、そこそこしっかりした印刷がされた雑誌というものは人々はみなが大事に買って眺めたものだ。

 記事が気になるからと、他人が気軽に手を伸ばせば怒られた。
 ページを折ったり曲げては困る。

 もしかすると飾りたくなる写真があるかも知れないじゃないか。
 それが折れていまえば困るじゃないか、というわけだ。


 そして広告には製品やキャッチコピーが入り込んでいる。
 あまり出しゃばらないようにして、そっと売りたい製品が背景を飾っている。

 やがてその広告の切り抜きが巷をにぎわせ、色んな男性の部屋や飲み屋に飾られ、いつかその影響が浸透して商品が売れるかもしれない。

 ブランドの価値が高まるかもしれないのだ。



 
 今、ブログやホームページなどで広告のバナーを貼っている感覚は似たものがあるかも知れない。

 こういう広告を掲載していた雑誌の編集側の感覚に似ていると言える。あるいは共通はしているが逆と言ったらいいだろうか。


 文字の記事ばかりのブログでは寂しいし、目を休ませるものがないと読者には読みにくい。

 かといってイラストや写真ではあまり意味がない。
 写真が趣味のブログならまだしも、記事より写真に目を奪われてしまうのでは困る。その説明も必要になってくる。


 そこで、ちょっとしたサイズの広告バナーを貼ってページに彩りを添える。

 価値があるのは記事の方だが、まずは包装紙の方も見て欲しいというわけだ。


 それによって、「この記事には多少は値打ちがある」と、読者へメッセージを伝えることにもなる。


 もちろん、僭越ながら当ブログの広告バナーにもこれと同じ意味がある。


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