こういう、いかにも上手そうなビールというのが売られた。
まだビールが元気な頃だった。みながビールを美味そうに飲んでいた時代があった。
ドイツから製法を輸入して、ビヤマイスターか何か秘伝を教えてもらったような、そんなとっておきに作ったようなビール。
紙の封が、瓶の栓に丁寧に巻いてあってその紙ごと栓抜きで開ける。
クシャりと紙が切れる音がしてそっと静かに栓が開く。
静かにおいていたビールがわずかに眠りから覚めて、小さな泡が瓶の中でそっと立つ。
まだグラスに注ぐまではビールは起きない。
注意して背の高い細身のグラスに注ぐと、そのクリームのような細かい泡とともにビールが美味そうにその金色の姿を見せる。
それは美味しいはずだ。
飛び切りの時間だったはずだ。
業界が政治に文句を言わず、何かウマイ話でももらえるかとクチを開け、ただ黙って酒税をメチャクチャにさせるに任せた。その挙句に誰ももうビールなど楽しむことなどしなくなった。
まるで投票を棄権しておいて政治に文句を言う連中のように、業界がロビー活動も発言もせず、ただ自分たちの商売をダメにされるのを黙って見ていた。
財務省に睨まれたら怖いとばかりに、やりたい放題させてひとつの文化をダメにしたのだ。
カッコいいことを言っていても、志などどこにもなかった。
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