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 マニアックな話だが、昔の昭和のオーディオマニアの世界では、こうしてレコードのターンテーブル部分だけが単独で売られていて、それを木の枠に落とし込んだ。
 枠は別売りだった。

 レコードプレーヤーというと、我々はこの広告の下の小さな囲み写真のようにケーブルをスピーカーやアンプにつなげて電源を入れるだけのものと思っているが、マニアックな世界では違った。



 安定して揺れのない固いクルミや樫なんかをフレーム枠に選んだりする。

 丸くくり貫いた枠にターンテーブル部分を落とし込んで、安定させる。
 あるいは、むしろ柔らかい木の方が振動を吸収するとか考えて共振するようなものを期待して柔らかい木を使ったり、そんな風に考えて最高の音を作ろうとした。


 「アナログ」という言葉のように、レコード盤はプラスチックの円盤に凸凹が掘り込まれたところを針で拾っていくものだ。デジタルではない。
 
 レコード盤そのものはどれも寸分違わない工業製品だとしても、その刻まれた凹凸を拾ってゆく仕組みと音という結果には様々な要素が入り込む。


 スピーカーが違えば音は違う。
 電源のノイズもあるし、レコードプレーヤーが回転して針が音を拾うことを考えるだけでも回転する歪みやキシみ、その違いはある。


 だからマニアックな追求をすればどうしてもひとつひとつのこだわりになった。

 オーディオ専門店などではそんな展示と売られ方がしていた。
 さしずめエンジンが展示されて売られていて、フレームはまた別に選べるというような感じ。

 そのセッティングなんかもしてくれたと思う。


 レコード針も、アームも、そしてこんな回転する駆動部も全てがカスタムなもの、そういう一家言ある人々が多くいたのだ。

 それでどんな曲を聴いていたのか、ジャズやクラシック、少なくとも歌謡曲ではなかったろう。 




 しかし、よく考えてみると、これは主婦にとってのシステムキッチンと同じかも知れない。

 あれもガスコンロを選んで、それを落とし込むガス台はまた別に買うものだ。

 新婚の夫が妻にシステムキッチンを買って喜ばせるというという話はある。マンションにしてもシステムキッチン設備として大きなポイントだ。


 ホーローの引き出しで汚れが付きにくいとか、ガラス・トップになっているからガス台の掃除がしやすいとか。なかなかマニアックな話がある。

 料理をしなければ、ただの台にしか思えない。掃除すれば何だっていいとも思ったりする。

  それでどんな料理ができるのか、少なくともインスタントや冷凍ではしょうがないだろうが。